卑弥呼ー19 道草 二

 ④ この筑紫の雷山を以って、人麻呂の歌の
   真の「作歌場所」としてみた場合この歌は
   どのような意味となるのか。
≪その一≫「すめろぎは神にしませば」
   この雷山の上宮の際神である神々、すなわち
   二ニギノミコトや「天神七社」「地神五社」の神々
   は、(かっては生ある王者であったが)今や死者
   となり、「神」となっておられるので、
   の意となろう
 ≪その二≫「天雲の雷の上」
   ほとんどの季節、天雲のおおうことの多い、海が
   三方に近いこの山岳には、「天の宮」「雲の宮」と
   呼ばれる雷神社がある。そこに「すめろぎ」が
   祀られている姿をしめす。
 ≪その三≫「いほらせるかも」
   この雷山の雷神社の上宮・中宮・下宮に、右の
   神々が祀られ、「社(やしろ)」としてまします、
   ことを歌ったもの。
 ⑤ キイ・ポイントは、次の一点である。
   この歌の持つ特異性、それは「神が社に祀られ
   ている」こと。その実情を、「いほらせる」と。あた
   かも「人間の住居」のように表現している点だ。
   これはなぜか。
 ときは、七世紀末。白村江の敗戦のあとだ。
   多くの将兵は、百済の海中に没した。筑紫には
   唐の占領(進駐)軍が駐留していた。庶民の
   家々は荒れ、働き手(男)を失った庶民の生活
   はことごとく荒廃していた。一言で言えば、、、、
    
     「民のいほりは荒れ果てていた」 のだ。

   そのような荒廃した家々の間を通って人麻呂は
   雷山に登った。そこに「九州王朝の始祖」たる
   二ニギノミコトをはじめ、「天神」や「地神」の
   社のみは、“健在として”祀られていた。
      ・・・・・・その姿をうたった。
 その歌の背後には、
   「民のいほりは荒れ果ててしまったが、、、。」
    の余韻がこめられていたのである。
 
 ⑥ このような、人麻呂の「作歌法」はこの歌だけ
   ではない。

   古き家(や)に妹とわが見しぬばたまの黒牛潟
                 を見ればさぶしも
  「『古き家(や)――ぬばたまの黒牛潟』というつ
  らなりには、何かゾッとするようなイメージがある。
  今も、この『古き家』の一角から、死んだはずの
  妹(いも)の亡霊が立ち現れて、自分に静かに寄り
  そってくるような、妹の声がヒッソリと呼びかけて
  くるような、妹の面影は永遠にここから立ち去らぬ、
  といった不気味さがある。人間の悲しみがある。
   七世紀も、二十世紀も、そして二十数世紀ののち
  にもけっしてかわりえぬ、人間の情念がただよって
  くる。『鬼哭啾啾』の四字を、はるかに優しく奥深く
  物すごく表現した。これこそ文学の世界だ。」
   ’上記の『古き家に・・・・・・さぶしも』の歌の、真の
  主役、それは『黒潮』である。それについては、一言
  も語られていない。ふれることがない。ないけれど、
  わかる。なぜなら、ところは『紀伊国』。黒潮の国だ。
   その黒潮の手前にあるのが、この黒牛潟であろう。
    『古き家』(後景)
    『黒牛潟』(中景)
    『黒潮』(前景)
  そして作者の眼前には、茫(ぼう)と逝(ゆ)いて
  帰らぬ一大潮流、黒潮が過ぎ行く。それは妹が
  生きていて、華やいだ、明るい声をあげていた日々
  も、うそのように、この世から消え去って、すでに
  会うよしもない今も、茫々と、黒潮は流れきたり、
  流れさっているのである。
   明日、わたし(作者)がこの世から消え去っても
  、おそらくなんのゆるぎもなく、こだわりもなく、黒
  潮はやはり茫々と流れ去っていることであろう。
   そのように、この歌を、その ありていな 現場
  において、見つめてみると、これは『歌われざる
  海の歌』かもしれないのである。」
         (古田『人麻呂の運命』原書房刊)
  

   の例を揚げて古田氏は説明しています。
    ・・・・・「歌の表面に現れていない、背後に
      真の主題が隠されている」・・・・、と。

 ⑦ では「雷山」の歌の表面には現れていない
    そのテーマ、それは
   「民のいほりは荒れ果てにけり」
  ・・・・・・これが真の主題だったのだ。
  
  このページも古田武彦氏著の「古代史の十字路」
   から抜粋させていただきました・・・・・・ 

 まだまだ続きがあります・・よろしく!
    
   

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